- 本書の概要
- 著者プロフィール
この労働生産性向上に寄与するのが「イノベーション」であり、その結果、先進国経済は人口増加率を上回って成長してきた。また、先進国の「成熟経済」には、常に需要の飽和という成長率低下の圧力がかかっているが、新しいモノやサービスの誕生、すなわち「プロダクト・イノベーション」が大きな需要を生み出してきたのだ。
一読すれば、過度な人口減少ペシミズム(悲観論)に陥る必要はなく、超高齢化社会を迎える日本においても、持続的な経済成長が可能であることがわかるはずだ。また本書では、AIや ITと労働力、日本経済の財政赤字、社会保障といった課題にまで言及し、経済成長と人間の幸福といった論点まで考えさせる内容となっている。
著者は日本を代表するマクロ経済学者の一人で、ニューヨーク州立大学助教授、東京大学大学院教授などを経て、現在は立正大学教授を務める吉川洋氏。経済学の歴史も紐解きながら、わかりやすい分析がなされた本書は、人口と日本経済の将来を憂える方はもちろん、今後の日本経済を背負う若手ビジネスパーソンにも必読の希望の書である。
1951年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D)。ニューヨーク州立大学助教授、大阪大学社会経済研究所助教授、東京大学助教授、東京大学大学院教授を経て、立正大学教授。専攻はマクロ経済学。著書『マクロ経済学研究』(東京大学出版会、1984年、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞)、『日本経済とマクロ経済学』(東洋経済新報社、1992年、エコノミスト賞)、『転換期の日本経済』(岩波書店、1999年、読売・吉野作造賞)など。
第2章 人口減少と日本経済
第3章 長寿という果実
第4章 人間にとって経済とは何か
要約ダイジェスト
人口減少と日本経済
1990年代の初めにバブルが崩壊すると、日本の経済と社会は長いトンネルに入った。四半世紀に及ぶ閉塞感の原因は一つではないが、常に挙げられるのが人口減少である。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(出生中位)によると、日本の人口は 2110年に 4,286万人まで減少する。現在の人口が 100年間で 1/3になるのである。
少子化に伴う人口減少・急速な高齢化は、