『日本のマネジメントの名著を読む』
(日本経済新聞社/編)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 時代を越えて読み継がれる「名著」は数多く存在し、そうした先人の叡智は大きな示唆を与えてくれる。だが、なかなか手に取る暇がないビジネスパーソンも多いはずだ。そこで本書では、著名コンサルタントやビジネススクール人気教員たちが、自らの推薦する日本のマネジメントの名著を紹介し、ケーススタディを交えてわかりやすく解説する。

 取り上げられているのは、日本を代表する経営学者の手による『失敗の本質』(野中郁次郎ほか著)、『戦略不全の論理』(三品和広著)、『経営戦略の論理』(伊丹敬之著)などから『小倉昌男 経営学』(小倉昌男著)といった著名経営者の経営論まで珠玉の 10冊。マネジメントに必要な戦略や組織についての名著が横断的にまとめられている。

 読み進めると、例えば「戦略の失敗」という一つの事象に対しても、その着眼点は様々であり、唯一の正解はないことに気づく。本書では原著の今日的意義や本書の独自事例も多く挙げられ、より視野を広げた思考ができるはずだ。また、すでに読了した本があっても、専門家の「読み方」自体から、新たな学びや気付きが得られるだろう。

 まずは本書を手に取り、興味をひかれたものがあれば、ぜひそれらの原著まで読み進めることをお勧めしたい。そのためのガイドブックとして本書は最適だ。ここでは、A.T.カーニー 日本法人会長 梅澤高明氏の手による『失敗の本質』と『戦略不全の論理』についての解説をご紹介する。

編者:日本経済新聞社
執筆:梅澤高明(ウメザワ タカアキ)第1章、第2章
 A.T.カーニー日本法人会長東京大学法学部卒業、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営学修士。日・米で20年にわたり、戦略・マーケティング・イノベーション・組織関連のコンサルティングを実施。経済産業省・内閣官房の関連会議委員として、クールジャパン戦略の立案、およびクールジャパン機構の創設を支援。
 内閣府「税制調査会」特別委員、オリパラ組織委員会「テクノロジー諮問委員会」委員。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーター。著書に『最強のシナリオプランニング』(編著、東洋経済新報社)、『グローバルエリートの仕事作法』(プレジデント社)など。「NeXTOKYO Project」で、東京の将来ビジョン・特区構想を政府・産業界に提言。

岸本義之(キシモト ヨシユキ)第3章、第4章
 PwCコンサルティング合同会社のStrategy&(旧ブーズ・アンド・カンパニー)シニア・エグゼクティブ・アドバイザー。東京大学経済学部卒業、米国ノースウェスタン大学ケロッグ校MBA、慶慮義塾大学大学院経営管理研究科 Ph.D.。マッキンゼーを経て現職。早稲田大学大学院経営管理研究科客員教授を兼務。20年以上にわたって、金融・サービス・自動車などの業界のマーケティング領域のコンサルティングに従事してきた。

入山章栄(イリヤマ アキエ)第5章
 早稲田大学ビジネススクール准教授。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。
 2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2013年から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。主な著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)がある。

大海太郎(オオガイ タロウ)第6章
 ウイリス・タワーズワトソン・グループ タワーズワトソン代表取締役社長。日本興業銀行にて、資産運用業務等に従事した後・マッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて本邦大手企業・多国籍企業に対して経営全般の様々な課題についてアドバイス。2003年にタワーズワトソンに入社し、2006年よりインベストメント部門を統括。日本の年金基金を中心とした機関投資家向けにガバナンスの構築や運用方針の立案や実施、運用機関の調査・評価に携わり、業界の発展に尽力。2013年7月より現職。
 公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学にて経営学修士(MBA)取得。ファイナンス専攻。

奥野慎太郎(オクノ シンタロウ)第7章、第9章
 ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン パートナー。京都大学経済学部卒業、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院経営学修士課程修了。東海旅客鉄道(JR東海)を経て、ベインに参画。全社戦略・ターンアラウンド(企業再生)、M&A(合併・買収)戦略を中心に、ハイテク、小売り、消費財、製薬、自動車、建設、金融など、幅広い業界のプロジェクトを手掛ける。

清水勝彦(シミズ カツヒコ)第8章
 慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。東京大学法学部卒、ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサス A&M大学経営学博士(Ph.D.)。コーポレイトディレクション(プリンシプルコンサルタント)、テキサス大学サンアントニオ校助教授、同准教授(テニュア取得)を経て2010年から現職。国際学会での業績も多く Strategic Management Journal等の編集委員(Editorial Board)を務めるほか、近著に『戦略と実行』『経営学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由』(日経BP社)などがある。

森健太郎(モリ ケンタロウ)第10章
 ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。ケンブリッジ大学物理学部卒業。モニター・カンパニー、BCGボストンオフィスを経て現在に至る。消費財、流通、運輸、エンタテインメントの業界を中心に、事業戦略、マーケティング、営業改革などの戦略策定・実行支援プロジェクトを手掛ける。

1.『失敗の本質』寺本義也、野中郁次郎ほか著
―現代日本企業への教訓と示唆(梅澤高明 A.T.カーニー)
2.『戦略不全の論理』三品和広著
―日本企業の慢性的な低収益病の要(梅澤高明 A.T.カーニー)
3.『知識創造企業』野中郁次郎、竹内弘高著
―失われた?日本企業の強さの源泉(岸本義之〈執筆時〉ブーズ・アンド・カンパニー)
4.『経営戦略の論理〈第4版〉』伊丹敬之著
―戦略が成功するための5つの適合要因(岸本義之〈執筆時〉プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー)
5.『小倉昌男経営学』小倉昌男著
―知の探索で築き上げた宅急便ビジネス(入山章栄 早稲田大学ビジネススクール)
6.『会社は頭から腐る』冨山和彦著
―企業再生の経験と日本企業の病理(大海太郎 ウィリス・タワーズワトソン・グループ)
7.『日本はなぜ敗れるのか』山本七平著
―前提と乖離した戦略・戦術の悲劇(奥野慎太郎 ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン)
8.『「バカな」と「なるほど」』吉原英樹著
―よい戦略はどうやって生まれるか(清水勝彦 慶應義塾大学ビジネススクール)
9.『論語と算盤』渋沢栄一著
―「日本実業界の父」の経営哲学(奥野慎太郎 ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン)
10.『木のいのち木のこころ』西岡常一、小川三夫ほか著
―欠点から長所は生まれる(森健太郎 ボストンコンサルティンググループ)

要約ダイジェスト

『失敗の本質』寺本義也、野中郁次郎ほか著―現代日本企業への教訓と示唆

敗戦を招いた「あいまいな目標」

『失敗の本質』は、太平洋戦争で行われた 6つの作戦における日本軍の失敗を緻密に分析した事例研究だ。その指摘の多くが、現代の日本企業が抱える課題にそのまま重なり、経営者や管理職など組織に関わる全てのプロフェッショナルに、貴重な教訓と示唆を与える名著である。

 本書では日本軍の失敗を戦略と組織の 2つの側面から指摘する。まず、

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