『ヤンキーの虎 – 新・ジモト経済の支配者たち』
(藤野英人/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 ファンドマネジャーとして活躍する著者は、日本全国の地方都市を回る中で、地方経済の衰退と裏腹に大きく成功している経営者(ヤンキーの虎)が多いことに気がついた。彼らの名刺を見ると、〇〇ホールディングスという形で、新規性のある事業ではないが、建設業、介護施設、飲食業など様々な事業を手がけ、多角的に儲けているという。

「ヤンキーの虎」とは穏やかではない名称だが、それは彼らの肉食系ともいえる特徴を捉えたものだ。彼らの多くは規模の拡大とリスクをとることを好み、意外にも勉強熱心だ。東京への憧れを持たず、生まれ育った地方で働き、「地元コミュニティ」から離れない「マイルドヤンキー」と対比される言葉で、彼らの雇用主だと考えるとわかりやすい。

 ヤンキーの虎の中には、M&Aで規模を拡大して上場した経営者もいる。さらに各地方では、虎予備軍が文字通り虎視眈々と地域制覇を狙っているという。本書では、そんなヤンキーの虎が縮小する地方経済の中で成功できた背景、彼らの特徴や考え方、M&Aや「プチコングロマリット化」といった経営戦略までを明らかにする。

 地域経済の担い手として存在感を高めつつある彼らを分析することで、都市圏の大企業やベンチャー企業をウォッチしているだけでは決してわからない、日本経済の可能性と未来が見えてくるはずだ。経営書としてはもちろん、地域活性や地方創生に関心が高い方にも興味深く読める一冊である。

著者:藤野 英人(フジノ ヒデト)
 レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者。1966年、富山県生まれ。90年早稲田大学法学部を卒業後、野村投資顧問、ジャーデン・フレミング投信・投資顧問(現JPモルガン・フレミング・アセット・マネジメント)を経て、2003年8月レオス・キャピタルワークスを創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネジャーとして豊富なキャリアを持つ。現在、運用している「ひふみ投信」は4年連続R&I優秀ファンド賞を受賞、さらに「ひふみ投信」「ひふみプラス」を合わせた、ひふみマザーファンドの運用総額は1000億円を超えている(2016年3月現在)。
 ベンチャーキャピタリストでもあり、自身が創業して投資をしたウォーターダイレクトは上場を成功して、現在は同社の取締役。また東証JPXアカデミーフェロー。明治大学商学部兼任講師。著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『運用のプロが教える草食系投資』(共著:日本経済新聞出版社)など多数。
序 章 知られざる成長ビジネスが地方にある-ジモト経済を席巻する「ヤンキーの虎」
第1章 「ヤンキーの虎」はなぜ生まれたか-小泉改革、IT革命の功罪
第2章 「ヤンキーの虎」の実像に迫る-その生態、価値観から嗜好性まで
第3章 「ヤンキーの虎」のビジネス手法-なぜ強いのか、投資家の視点で分析
第4章 「ヤンキーの虎」と地方の未来はどうなるか?-政府の経済政策が大きく変わり始めている
第5章 「地方創生」に向けた私の取り組み

要約ダイジェスト

縮小する地方で成功者となった「ヤンキーの虎」

 日本全体の経済は縮小し、少子高齢化は急速に進んでいる。そして、このような傾向は、都市部より地方のほうがはるかに強い。ところが、実際に全国各地を回ると、地方経済は確かにシュリンクしているのに、成功している人たちがたくさんいるのである。

 地方の成功者たちに共通するのは、「リスクテイカー」だということ。縮小する地方の中でリスクをとるなんて、馬鹿げていると思われるだろう。しかし彼らは、

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