『地政学で読む世界覇権 2030』
(ピーター・ゼイハン/著)

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  • 目次
 なぜアメリカは超大国となれたのか?2030年まで、そしてその後の世界はどうなるのか?こうした疑問に答えるのが「地政学」だ。地政学は国土や資源などの条件から世界情勢を読み解くもので、地政学の専門家にして「影のCIA」と称される情報機関ストラトフォーの元幹部である著者によれば、今後アメリカはさらに力を増し”独り勝ち”する。

 アメリカは恵まれた地理と自由貿易体制を武器として、現在の世界の仕組みをつくりあげた。しかし国際貿易や人口構造、エネルギー供給の激変により、近く先進国が大規模な危機に陥るという。ただし再び地政学的条件に守られ、アメリカのみがそのダメージを受けないのだ。本書ではまた、それに伴う他国の見通しを大胆に予言する。

 例えば、統一国家としての中国やロシアの危うさが、緻密な分析によって示されている。著者は米国はパワー不足からではなく、その必要がなくなるがゆえに、世界への影響力を縮小させると考える。折しも世間を騒がせている米大統領候補 ドナルド・トランプ氏の姿勢は「不介入主義」「孤立主義」ともいわれるもので、本書の予測と一致している。

 もちろん、本書の結論はポジショントークの可能性もあるし、シェール資源には原油安リスクもある。それゆえ結論は賛否が分かれるだろう。だが、それらを差し引いても本書の着眼点や示唆から学べることは多い。古代エジプトから現在の都市経済、そして未来まで語りつくされた本書は、地政学入門書としても有用だ。ぜひご一読いただきたい。

著者:ピーター・ゼイハン(Peter Zeihan)
 ゼイハン地政学社(Zeihan on Geopolitics)社長。影のCIAとも呼ばれる情報機関ストラトフォーに12年間勤務し、分析部門のバイス・プレジデントまで上り詰め、独立。ストラトフォーは、ベストセラー『100年予測』著者ジョージ・フリードマンが1996年に設立した組織。ウォール・ストリート・ジャーナル、フォーブス、ブルームバーグ、APなど、多数のメディアが彼の分析に注目している。

翻訳:木村 高子(キムラ タカコ)
 英語・仏語翻訳家。フランス・ストラスブール大学歴史学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科考古学専攻修士課程修了。スロヴェニア在住。訳書に『色 民族と色の文化史』(共訳、マール社)、『図説 イスラーム庭園』(原書房)、『ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか』(武田ランダムハウスジャパン)、『今、目の前で起きていることの意味について』(早川書房)、『香水瓶の図鑑』(原書房)などがある。

プロローグ
1章 私たちが知っているつもりの世界
2章 エジプト:ここから向こうまでの生き方
3章 技術革命:遠洋航海術と工業化
4章 偶然の超大国の登場
5章 地政学を独占する
6章 人口の激変
7章 シェールの台頭
8章 世界的な混乱期の到来
9章 パートナーの国々
エピローグ アメリカの時代
補遺I 気候変動は恐れるに足らず
補遺Ⅱ 人口と貿易

要約ダイジェスト

偶然の超大国の登場

 地政学とは、ある土地が、そこに存在するあらゆるものにどう影響するかを考察する学問だ。住民の衣服、食べ物、何歳まで生きられるか、どんな戦争を仕掛けたり防衛したりするか、究極的にはその文化が時の試練に耐え抜けるかどうか。川、山、海、平原、砂漠などのバランスが、そこに住む人間の生活と、国家の成功に決定的に影響するのだ。

 その結果導き出された結論は、しばしば私を落ち着かなくさせる。私は自由貿易と西側諸国のネットワークこそ史上最大の平和と繁栄を保障すると考えているので、これを強く支持している。しかし地理を研究すると、

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