- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書はそうした「目に見えない問題を見抜き、解決する力」、すなわち「洞察力」を様々な事例からモデル化し、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでベストセラーとなった一冊である。著者は、著名な認知心理学者で、もし「ノーベル心理学賞」があれば受賞確実といわれるゲイリー・クライン氏。
本書では、著者が確立した「現場主義的意思決定(NDM)理論」を応用して、実験室ではなく、現場の事例から「洞察力」を丁寧にひもといていく。その結果モデル化された、洞察力を発揮するための5つの方法と3つのプロセスは、単純な方法論(How to)ではないが、それゆえに読者の思索を促し、様々な示唆を与えてくれる。
本質的な洞察力やシステム思考、行動経済学などに関心がある方はもちろん、組織変革に関わる方にもぜひご一読いただきたい。洞察力を組織に根付かせるための興味深いエピソードの数々は、それだけでも一読の価値があるだろう。
米国認知心理学者。1944年、ニューヨーク市出身。1969年にピッツバーグ大学で実験心理学の博士号を取得。1989年、『現場主義的意思決定(Naturalistic Decision-Making,NDM)理論』を構築したことで世界的名声を博す。オークランド大学助教授、ウィルバーフォース大学准教授を経て、米空軍省に研究者として勤務。1978年にR&D企業クライン・アソシエイツを創業。2005年に同社を売却。
現在、マクロコグニション社の上級研究員。ホワイトハウス・シチュエーションルームのリーダーの1人として活躍した経験がある。米国心理学会、米国人間工学会の各役員。2008年、米国人間工学会よりJack A. Kraftイノベーション賞を受賞。著書に『決断の法則?人はどのようにして意思決定するのか?』(佐藤洋一訳/トッパン)がある。
著者:奈良 潤(ナラ ジュン)
意思決定学者。教育コンサルタント。1976年、東京都出身。高校卒業後、渡米。2010年、カペラ大学で教育学の博士号を取得。大学院在学中より、外資系企業就職の人材育成に携わる。現在、総合教育会社スカイビジネスの代表を務める。日本認知科学会、米国人間工学会、米国判断意思決定学会の各正会員。翻訳書に、『戦略のためのシナリオ・プラニング』(ロムロ・W・ガイオソ著/フォレスト出版)がある。
CHAPTER.1 見えない問題とは何かをつかむ
CHAPTER.2 洞察力を導く5つの認識パターン
CHAPTER.3 出来事のつながりから見抜く方法
CHAPTER.4 偶然の一致と好奇心から見抜く方法
CHAPTER.5 出来事の矛盾から見抜く方法
CHAPTER.6 絶望的な状況における、やけっぱちな推測による方法
CHAPTER.7「見えない問題を見抜く」ための別の方法
CHAPTER.8 問題発見への3つのプロセス
2.見えない問題を見抜くための「心の扉」を開ける~私たちを邪魔するものの正体は何か?
CHAPTER.9 自信を持って誤る偽りの発見
CHAPTER.10 問題を見抜く人、見抜けない人
CHAPTER.11 厳格なITシステムが直感を鈍らせる
CHAPTER.12 組織は「見えない問題を見抜く力」をどのように抑圧しているのか?
CHAPTER.13 結局、人が問題を見抜けないのはなぜなのか?
3.目には見えない問題を見抜く「心の扉」を開け放つ~問題解決法を身につけることができるのか?
CHAPTER.14 「見えない問題を見抜く力」は自分自身を救う
CHAPTER.15 「見えない問題を見抜く力」は人を救う
CHAPTER.16 「見えない問題を見抜く力」は組織を救う
CHAPTER.17 見えない本質を見抜く人になるためのヒント
CHAPTER.18 「見えない問題を見抜く力」という魔法
要約ダイジェスト
見えない問題とは何かをつかむ
ある警官はパトロール中、新車のBMWの運転手が、椅子のクッションカバーにタバコの灰を指で弾いて落としたのを見て、盗難車であると狙いをつけた。自分の車の中でタバコの灰を落とした——これが彼の「見えない問題を見抜く力」だった。
誰が新車の高級車の中でタバコの灰を落とすだろうか?それは車の所有者ではない。車を借りた友人でもない。おそらく運転手は車を盗んだ男だ。私はこの種の、