- 本書の概要
- 著者プロフィール
エストニアでは、15歳以上のほとんどの国民が国民カード(eIDカード)を持ち、オンライン認証や電子署名が普及し、行政サービスや選挙、納税などはもちろん、銀行取引などの民間サービスでもインターネット上で完結できる仕組みが整っているという。この点で、まさに日本がこれから向かう方向にある「未来型国家」と言えるだろう。
また驚かされるのが、こうしたICT戦略が、圧倒的な低予算で実行されてきたことだ。その予算は数十億程度であり、2001年開始のe-JAPAN戦略以来、毎年1兆円を超える予算を計上してきた日本とは大きく異なる。しかも、日本では行政の窓口手続きなどで、国民はその恩恵を実感できていない。人口規模が多いとはいえ、日本が学ぶべきことは多い。
本書ではエストニアのICT戦略や行政サービスの詳細から、eIDカードの運用、教育、Skypeを生み出したスタート・アップ大国でもあるエストニアの起業事情まで、余さず伝えている。地方創生や行政、社会課題の解決などに興味がある方にはもちろん参考になるが、「少し先の未来」の日本の姿として、ビジネス的にも示唆が多い内容となっている。
日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会 理事。1979年エストニア生まれ。タルトゥ大学卒業後、早稲田大学の修士課程を修了する。エストニア 経済通信省 局次長を経て民間へ。前職では、エストニア経済通信省(Ministry of Economic Affairs and Communications)の経済開発部で局次長を務める。同省では2020年に向けたエストニア情報社会のための新たな戦略と政策の設計などを担当。
現在は日本に暮らし、エストニア行政での経験と知識を生かしてコンサルティング会社ESTASIAを2012年12月に設立し、アジアにエストニアの行政システムなどを紹介している。2013年には日本のクラフトビールを欧州へ輸入するBIIRUを設立。2016年はIoT系スタートアップ企業を設立して活動予定。
著者:前田 陽二(マエダ ヨウジ)
日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会 代表理事。1948年富山市生まれ。早稲田大学理工学部電子通信学科卒業後、同大学理工学研究科修士課程を修了。三菱電機株式会社に入社し、文字・画像認識分野の研究開発に従事した後、2001年~2009年にECOM(次世代電子商取引推進協議会)に出向し電子署名および認証の分野を中心に調査研究に従事。2010年~2013年、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)主席研究員、2005年~2014年、はこだて未来大学(夏季集中講座)非常勤講師。工学博士。共著に『IT立国エストニア バルトの新しい風』(慧文社)、『国民ID制度が日本を救う』(新潮新書)他。
1章 首都タリンでの生活
2章 エストニアの歴史、政治、ICT推進の経緯
3章 ICTサービスを支える情報基盤
4章 電子政府サービス
5章 エストニアの将来ビジョン
6章 スタートアップ国家・エストニア
7章 マイナンバー制度への期待
要約ダイジェスト
市民にとっての電子政府
北欧のバルト3国の一つにエストニアという国がある。1991年に旧ソ連から再独立し、小国ながら今やICT先進国として先進的な取り組みを行っている。エストニアでは、15歳以上の全国民のほとんどがエストニア国民であること証明する国民IDカード(elDカード)を持つ。
2005年には世界で初めてインターネットによる地方選挙を行い、2007年には国政選挙においてインターネット投票を可能にした。エストニアのICT構築に対する国家予算は年間70億円程度と、