- 本書の概要
- 著者プロフィール
国際機関によるデータや、政府公式の統計年鑑、人口動態や中国の歴史も踏まえて導き出された結論は、今後、中国に”急激ではない”バブル崩壊が訪れ、長期的な経済停滞に陥るというものだ。本書では経済にとどまらず、都市と農村の格差、エネルギー・環境問題、労賃、不動産、食料、軍事などを横断し、説得力ある中国分析が展開されている。
しかし、それは日本の輸出産業にとってさらなる苦境が到来することも意味している。中国は輸出をさらに強化すると予測できるからだ。そうしたとき、日本はどのような方向を目指すべきか。製造業からITまで、中国があらゆる業界に影響を与えるようになった今、こうした見立てと分析は、業界を問わず必須のものである。
著者は環境経済学、農学を専門とし、「システム分析」を駆使した前著『データで読み解く中国経済』で中国経済の減速を予測、高い評価を得た人物。本書ではまた、中国、日本だけでなく、欧米諸国や東南アジア諸国などについても多く言及されている。”21世紀のアジア”を意識し、グローバルを見据えるビジネスパーソンはぜひご一読頂きたい。
東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。1953年東京生まれ。1977年東京水産大学卒業、1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員等を経て現職。
主な著書に『世界の食料生産とバイオマスエネルギー』(東京大学出版会 2008)『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋 2009)『農民国家中国の限界』(東洋経済新報社 2010)『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版 2011)『「戦略」決定の方法』(朝日新聞出版 2012)『データで読み解く中国経済』(東洋経済新報社 2012)。
第2章 安い石炭を使うから強い
第3章 格差があるから強い
第4章 「中進国の罠」にはまる中国
第5章 不動産バブルの実態と今後
第6章「中華帝国」の野望
終章 中国の未来
要約ダイジェスト
中国に競り負ける日本
アベノミクスに伴い円安になっても、日本の輸出は伸び悩んでいる。多くのエコノミストはその理由を輸出産業が海外に出てしまったからと言っているが、中国というキーワードを加えてみると、全く異なる光景が見えてくる。
21世紀に入った頃から、米国、中国、ドイツの輸出額は大きく伸びている。その中でも中国の伸びが著しい。2001年は2,994億ドルであったが、