『21世紀の不平等』
(アンソニー・B・アトキンソン/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』のブームが記憶に新しいように、「不平等の拡大」は世界中で注目されているテーマだ。『21世紀の資本』が格差問題に世界の目を向けさせた啓蒙・問題提起の書だとすれば、本書は不平等研究の世界的権威が、政策提言まで踏み込んで説いた行動・実践の書である。

 15に及ぶ本書の提言は、「結果の不平等」、すなわち現状の格差是正について説かれたもので、累進課税、相続税、児童手当、イノベーションへの投資、公的雇用保障、ODAの在り方など、公共領域の主要論点を網羅した革新的かつ説得力あるものとなっている。

 そのアプローチは、歴史、経済学、政治を緻密に横断して行われ、ピケティ氏が言うように「平等な社会に向けた現実的ビジョン」であり、21世紀型の福祉国家像とも呼べるものだ。著者のアンソニー・B・アトキンソン氏は、オックスフォード大学フェローで、不平等研究、所得分配に関する世界的権威でピケティ氏の師匠にあたる人物。

 また、驚くべきことに本書では数式が一度も使われていない。その意味で、骨太な大著だが『21世紀の資本』読了者はもちろん、格差や不平等、公共政策に関心を持つ読者は必読の一冊である。なお本書はフィナンシャル・タイムズ誌「2015年ベストブック」、エコノミスト誌「2015年ブックオブザイヤー」にも選出された。

著者:アンソニー・B・アトキンソン(Anthony B.Atkinson)
 オックスフォード大学ナフィールドカレッジ元学長。オックスフォード大学フェロー。所得分配論の第一人者であり、国際経済学会、欧州経済学会、計量経済学会、王立経済学会会長を歴任。所得と財産の分配の歴史的トレンド研究という新分野を切り開いた。論文・著書多数。

山形 浩生(ヤマガタ ヒロオ)
 翻訳家。1964年東京生まれ。東京大学工学系研究科都市工学科修士課程、マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務する一方、科学、文化、経済、コンピュータなどの幅広い分野で翻訳・執筆活動を行う。著書・翻訳書多数。訳書に『それでも金融はすばらしい』(2013年)、『アイデンティティ経済学』(2011年)、『アニマルスピリット』(2009年、以上東洋経済新報社)のほか、『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)『自己が心にやってくる』(早川書房、2013年)、『自由と尊厳を超えて』(春風社、2013年)など。

森本 正史(モリモト マサフミ)
 翻訳家。訳書に、『99%の反乱』(バジリコ、2012年)、『21世紀の資本』(みすず書房、2014年、以上共訳)ほか。

序文:平等な社会に向けた現実的なビジョン(トマ・ピケティ)
はじめに
第Ⅰ部 診断
 第1章 議論の基礎
 第2章 歴史から学ぶ
 第3章 不平等の経済学
第Ⅱ部 行動のための提案
 第4章 技術変化と対抗力
 第5章 雇用と将来の賃金
 第6章 資本の共有
 第7章 累進課税
 第8章 万人に社会保障を
第Ⅲ部 できるんだろうか?
 第9章 パイの縮小?
 第10章 グローバル化のせいで何もできないか?
 第11章 予算は足りるだろうか?
用語集

要約ダイジェスト

機会の不平等と結果の不平等

 不平等はいまや公的な論議の最前線にある。1%と99%について多くが書かれ、人々は不平等のひどさについて、以前よりもずっと詳しい。では世論の高まりを、実際に不平等を縮小する政策や活動に転換するにはどうすればいいだろう?

 「不平等」という言葉を聞くと、多くの人が「機会均等」の達成を思い浮かべる。機会均等の概念は魅力的なものだが、

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