『幼児教育の経済学』
(ジェームズ.J.ヘックマン/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 「貧困」「教育格差」「国力(労働生産性)低下」などの社会課題は相互に関連しているが、なかでも「教育格差」が是正されなければ、こうした課題は将来も再現されてしまうだろう。そこで本書では、ノーベル賞経済学者の著者が、米国を悩ます「教育格差」を幼少時教育によって変革し、社会の平等性や生産性を向上させる手法を提唱する。

 著者は40年以上にわたり追跡調査が行われた実験などから、学力などの「認知的スキル」だけではなく、「非認知的」スキル(精神的健康、根気強さ、意欲など)が、人生の成功に不可欠であり、これらの発達が6歳までの教育環境に大きく左右されることを明らかにする。逆にいえば、幼少時の教育的援助は、投資対効果の高い政策だといえるのだ。

 日本でも子供の貧困率は徐々に上昇しており、近年では、高齢者の貧困率を上回り最も高いのは5歳未満の子供の貧困率だという。その背景には20~30代の貧困率上昇や、母子家庭の増加があげられているが、教育格差は日本とって対岸の火事ではないのだ。

 本書では著者の提案に対する反対意見も専門家から寄稿され、それに対する再反論、補足にも紙面が割かれることで、深みのある内容となっている。実際の幼児教育で実践できる知識から、マクロな公共施策としての論点までがコンパクトにまとまっており、教育や育児、社会福祉、公共政策に関心を持つ方には必読の内容である。

著者:ジェームズ・J・ヘックマン(James J.Heckman)
 1965年コロラド大学卒業、1971年プリンストン大学でPh.D.(経済学)取得。1973年よりシカゴ大学にて教鞭を執る。1983年ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞。2000年ノーベル経済学賞受賞。専門は労働経済学。

解説:大竹 文雄(オオタケ フミオ)
 1961年京都府生まれ。1983年京都大学経済学部卒業、1985年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。1985年大阪大学経済学部助手などを経て、2001年より同社会経済研究所教授。2013年より理事・副学長。博士(経済学)。専門は労働経済学、行動経済学。2005年日経・経済図書文化賞、2005年サントリー学芸賞、2006年毎日新聞社・エコノミスト賞(『日本の不平等』(日本経済新聞社、2005年))受賞。2006年日本経済学会・石川賞、2008年日本学士院賞受賞。近著に、『経済学のセンスを磨く』(日本経済新聞出版社、2015年)。

翻訳:古草 秀子(フルクサ ヒデコ)
 青山学院大学文学部英米文学科卒業。ロンドン大学アジア・アフリカ研究院を経て、ロンドン大学経済学院大学院で国際政治学を専攻。訳書に『エコノミック・ヒットマン』『内向型人間の時代』『病は心で治す』など多数。

【パート 1】子供たちに公平なチャンスを与える
【パート 2】各分野の専門家によるコメント
・職業訓練プログラムも成果を発揮する
・思春期の子供への介入も重要だ
・幼少期の教育は母親の人生も改善する
・質の違いよりすべての子がプログラムを受けられることが大事
・幼少期の教育的介入に否定的な報告もある
・ペリー就学前プロジェクトの成果は比較的小さい
・学業成績や収入は大事だが、人生のすべてではない
・良いプログラムは何が違うのかを研究し続ける必要がある
・恵まれない人々の文化的価値観に配慮した介入を
・就学前の親への教育と「変化する信念」が子供たちを救う
【パート 3】ライフサイクルを支援する
【解説】就学前教育の重要性と日本における本書の意義(大竹文雄:大阪大学副学長、大阪大学社会経済研究所教授)

要約ダイジェスト

子供たちに公平なチャンスを与える

 今日のアメリカでは、どんな環境に生まれるかが、不平等の主要な原因の一つになっている。恵まれない環境に生まれた子供は、技術を持たない人間に成長して、生涯賃金が低く、病気や十代の妊娠や犯罪など、個人的・社会的な問題に直面するリスクが非常に高い。

 生まれあわせた環境が人生にもたらす強力な影響は、

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