『ソーシャル物理学』
(アレックス・ペントランド/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 人々の頭のなかにあるアイデア、そしてそれが具現化された行動は、どのように生まれ、どのように伝播するのか。もしその法則性がわかれば、個人や企業における生産性やクリエイティビティ改善にも生かすことができる。しかし、アンケート調査などの従来の社会学的アプローチでは質量ともにその本質に迫るのは難しかった。

 こうした状況を一変させたのが、GPSやウェアラブルデータなどのビッグデータであり、そうしたデータの解析から、アイデアの流れ、ひいては人間行動の法則を明らかにする画期的な学問が「社会(ソーシャル)物理学」だ。本書は、個人から企業活動、都市計画や社会全体の設計まで、社会物理学の新たな成果を多数紹介した一冊である。

 例えば、組織のパフォーマンスを決めるのは、団結力やモチベーションといった要素ではなく、参加者が集団内での「会話」に平等に参加しているかどうかだったという。本書ではこうした驚きの知見と、その法則を応用した改善事例までが描かれ、生産性向上に関心を持つ個人と組織にとって示唆の多い内容となっている。

 なお、社会物理学では人間の自由意思を無視しているのではなく、それを表現する必要がない。それゆえほぼあらゆる場合に当てはまる説得性を持つのだ。著者は、MIT(マサチューセッツ工科大学)教授でビッグデータ研究の第一人者として知られる人物。解説は著者とも共同研究を行い、『データの見えざる手』の著作もある矢野和男氏。

著者:アレックス・ペントランド(Alex Pentland)
 マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。MITメディアラボ創設から関わり、現在は同ラボのヒューマンダイナミクス研究グループ所長を務める。ビッグデータ研究の世界的第一人者で、フォーブス誌の「世界で最も有力な7人のデータサイエンティスト」にも選ばれた。また10以上のビッグデータ関連の会社を創立した起業家でもある。世界経済フォーラムでは、ビッグデータと個人データ保護に関するイニシアチブを主導。邦訳書に『正直シグナル―非言語コミュニケーションの科学』(みすず書房)がある。
翻訳:小林啓倫(コバヤシ アキヒト)
 株式会社日立コンサルティング 経営コンサルタント。筑波大学大学院卒。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、2003年に米バブソン大学にてMBAを取得、2005年より現職。著書に『ドローン・ビジネスの衝撃』(朝日新聞出版)、訳書に『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(日経BP)、『ビッグデータテクノロジー完全ガイド』(マイナビ)など。

解説:矢野和男(ヤノ カズオ)
 株式会社日立製作所研究開発グループ 技師長。早稲田大学物理修士卒、工学博士。1984年に日立製作所入社。ウエアラブル技術を用いたビッグデータの収集・分析により世界的に注目を集め、Erice Prizeなど国際的な賞を多数受賞。本書著者と、本書の中でもとり上がられている人間行動計測の共同研究を行った。東京工業大大学院連携教授。文部科学省情報科学技術委員。IEEEフェロー。著書に『データの見えざる手―ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社)がある。

第1章 社会物理学とは何か
第2章 探求
第3章 アイデアの流れ
第4章 エンゲージメント
第5章 集団的知性
第6章 組織を改善する
第7章 組織を変化に対応させる
第8章 都市のセンシング
第9章 「なぜ人は都市をつくるのか」の科学
第10章 データ駆動型社会
第11章 社会をより良くデザインする
解説 [矢野和男(日立製作所研究開発グループ)]

要約ダイジェスト

「社会物理学」とは何か

 社会物理学とは、情報やアイデアの流れと人々の行動の間にある数理的関係性を記述する、定量的な社会科学である。社会物理学は、アイデアが社会的学習を通じて人々の間をどのように伝わっていくのか、またその伝播が最終的に企業・都市・社会の規範や生産性、創造的成果などをどうやって決定づけるのか、私たちの理解を助ける。

 通常の物理学の目標が「エネルギーの流れがどのように運動の変化をもたらすか」を理解することであるように、

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