『そうじ資本主義 – 日本企業の倫理とトイレ掃除の精神』
(大森 信/著)

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 あなたの会社では、社員自らオフィスやトイレなどを掃除しているだろうか?一見、清掃は専門業者に委託するほうが合理的に思える。しかし、松下幸之助、本田宗一郎など、日本の経営者には自社社員による「掃除」を大切にし、経営者自ら掃除を手掛ける例も少なくない。それはなぜだろうか?

 社会・経済学者であるマックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のなかで、キリスト教徒のなかでも禁欲的な「プロテスタント」の人々が、むしろ経済の拡大再生産を追求する近代資本主義発展の礎になったと説いた。そしてウェーバーは、儒教的価値観からは真の資本主義的精神は生まれないとも考えていたという。

 しかし、日本企業が資本主義競争のなかで驚異的な発展を遂げた背景には「掃除」に代表される精神的土壌があったのだ。本書では、そうした現実の企業活動の中では重要だが、あまり先行研究がない「掃除」や「5S」に経営学者として光を当てた著者が、掃除の経営的意味、掃除を通して日本人に宿っていった労働精神などを解き明かす。

 掃除がもたらす「自力・利他・他力」の精神など、興味深い内容が説かれ、一見意味がないように見えることこそ長期的に本質的差異を生むことを改めて考えさせられるはずだ。「掃除なんて…」と思いがちなビジネスパーソンや経営者はもちろん、すでに掃除を積極的に行っている実践者にもぜひご一読頂きたい一冊である。

著者:大森信
 日本大学経済学部教授。2001年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(経営学)。城西国際大学経営情報学部ならびに福祉総合学部専任講師、東京国際大学商学部助教授を経て、現職。著書に『トイレ掃除の経営学』(白桃書房)、『毎日の掃除で、会社はみるみる強くなる』(日本実業出版社)などがある。大阪商工会議所「掃除でおもてなし研究会」座長。同会主催のセミナーは、大阪商工会議所始まって以来の最大参加者900人を集めた(2013年)。
序文 (加護野忠男・甲南大学特別客員教授)マックス・ウェーバーも予想しなかった「そうじ資本主義」の発達
はじめに 「タイム・イズ・マネー」と「掃除・イズ・マネー」
第1部 日本企業の倫理
 第1章 「時は金なり」の本当の意味 『プロ倫』が現代人に教えること
 第2章 「遅刻」と「おしゃべり」 日本人は本当に勤勉なのか?
 第3章 「まねる」と「禁止」 伝統的コミュニティ内のしつけ法
 第4章 掃除・イズ・マネー 日本における「科学的管理法」の導入
 第5章 5Sの進化 本田宗一郎はなぜ掃除にこだわったのか?
 第6章 ディズニーランドの掃除 日本の掃除と何が違うのか?
 第7章 目的志向と手段志向 ピカピカに磨き上げる意味は何か?
 対談(鍵山秀三郎・イエローハット創業者、塚越寛・伊那食品工業会長) 「凡事徹底」 掃除と企業経営
第2部 トイレ掃除の精神
 第8章 「やらない理由」は聞きません 松下幸之助が自分でトイレを掃除した理由
 第9章 「自力」から「他力」へ 従業員たちに宿る心
 第10章 ウェーバーの警鐘 トヨタが掃除をやめたらトヨタでいられるのか?

要約ダイジェスト

ウェーバーが発見したキリスト教と資本主義の関係性

 日本企業には、掃除を大切にする会社が少なくない。世界的に強い会社の中には、整理・整頓・清掃・清潔・躾の「5S」を徹底しているところが多数ある。ではなぜ日本企業は掃除や5Sを大切にするのか。

 マックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(以下プロ倫)で、

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