『現代暴力論―「あばれる力」を取り戻す』
(栗原 康/著)

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 民主主義社会において、「暴力」は忌避されるべきものだ。しかし、そこで思考停止せずに、実は「われわれは国家から一方的に暴力をふるわれている」としたらどうだろう。本書では原発事故以来、そうした国家の暴力がさらに強くなっていると指摘、大正時代のアナキスト大杉栄の思想を軸に、暴力、すなわち「あばれる力」を再考する。

 大杉によれば、あばれる力は人間が本来持つ生きる力であり、国家はそうした力を独占し、抑え込むことによって成り立っている。例えば、労働者はカネを稼げなければ価値がない、と思わされ、毎日必死に働く。こうした作用を著者は「生の負債化」と呼び、現在でも原発などの社会システムに、より巧妙に組み込まれていることを示す。

 これが、今もわれわれは国家から暴力を振るわれ続けているということであり、「生きる(Live)」のではなく、「生きのびる(Survive)」ことを強制されていると言いかえることもできるだろう。そこを抜け出すにはゼロから思考し、武器を取り、あばれる力を取り戻すしかない。そしてそれは直接的な武装蜂起のみを指しているわけではないのだ。

 著者はアナキズム研究で注目を集める気鋭の政治学者。思想・学問としてのアナキズムに賛同できるかは別として、リズミカルかつユーモアを交えた独自の文体で、滅法面白く読めるはずだ。日々疎かになりがちな、本来的な生きる力や人生のスタンスなど、今一度新たな視点から考えるきっかけを与えてくれる稀有な一冊である。

著者:栗原 康(クリハラ ヤスシ)
 1979年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科・博士後期課程満期退学。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。『大杉栄伝-永遠のアナキズム』(夜光社)で第5回「いける本大賞」受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2015第6位。注目を集める政治学者。
 個性溢れる文体から紡ぎ出される文章は、まるで講談を聞いているのかのようにリズミカルで必読。他書に『G8サミット体制とはなにか』(以文社)『学生に賃金を』(新評論)『はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言』(タパブックス)がある。
第1章 国家の暴力―我々は奴隷根性を植えつけられた
第2章 征服装置としての原子力―生きることを負債化される
第3章 生の拡充―支配のための力を解体する
第4章 恋愛という暴力―習俗を打破する
第5章 テロリズムのたそがれ―「犠牲と交換のロジック」を超えて

要約ダイジェスト

暴力を肯定しなおす

 今、私たちは一方的に暴力をふるわれている。この現代社会で暴力なんてふるわれていないという人もいるかもしれないが、そんなことはない。特に福島の原発事故以来、支配のための暴力が、より露骨になって現れている。

 私はこの十数年、大正時代のアナキスト、大杉栄を研究してきた。アナキストというのは、

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