『孫正義の焦燥―俺はまだ100分の1も成し遂げていない』
(大西孝弘/著)

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  • 目次
 日本が誇るベンチャー経営者 孫正義氏率いるソフトバンクは、今や利益、時価総額ともに日本を代表する大企業となった。また、創業者である本人は、すでに巨万の富を持つ資産家でもある。しかし同氏は、本書冒頭のインタビューにおいて「俺はまだやりたいこと、やるべきことの100分の1も成し遂げていない」と告白する。

 さらに記者として長く取材を続けてきた著者は、孫氏はこのままでは「歴史に名を残す経営者」にはなれないのではないかと問う。孫氏の経営手法は、パフォーマンスや投資家的色合いが強いと考える人が多いのも事実である。そこで著者は、現在転換期を迎えつつあるソフトバンクの課題と、経営者「孫正義」が目指す「情報革命」の未来に迫る。

 本書では「情報革命によって人々を幸せにする」という理念実現における、人型ロボット「ペッパー」の重要性や、成長鈍化が指摘される国内事業をどう立て直すのかなど、米スプリント社買収以降の同社の実像が詳しく語られ、後任候補のニケシュ・アローラ氏を含む後継者問題や、300年続く組織を発想する孫氏独自の歴史観についても言及される。

 また、社外取締役を務めるファーストリテイリング社創業者の柳井正へのインタビューも加えられ、経営の本質に多角的に迫る内容となっている。2015年に58歳を迎えて、なおリスクを取って前進し続ける姿勢に、畏敬の念はもちろん、読者自身の志やゴールを見直す機会と焦燥を与えてくれる稀有な一冊である。ぜひご一読頂きたい。

著者:大西 孝弘(オオニシ タカヒロ)
 「日経エコロジー」記者。1976年生まれ。上智大学法学部卒業後、2001年に日経BP社入社。環境・エネルギー専門誌「日経エコロジー」、ビジネス情報誌「日経ビジネス」を経て、2011年から日本経済新聞社に出向。2014年9月から現職。
第1章 「数十年間、無駄な時を過ごしてきた」…ロボット「ペッパー」誕生の舞台裏
第2章 「長く苦しい戦いになる」…アメリカの夢と挫折
第3章 「収穫期に入った」…盤石の国内事業に忍び寄る大企業病
第4章 「本業ではなく趣味」…情と理に揺れるエネルギー事業
第5章 「天才を使えるのは俺しかいない」…急成長を支えるストリートファイターたち
第6章 「日本の三大偉人は誰?」…「孫史観」による1000年のタイムマシン経営
第7章 「後継者はおぼろげに見えてきた」…ニケシュは孫正義2.0になれるのか
巻末インタビュー ソフトバンク社外取締役 柳井正ファーストリテイリング会長兼社長…「膨張より成長を目指せ」

要約ダイジェスト

情報革命で人々を幸せにしてきたか

 志高き挑戦者——裸一貫からソフトバンクを設立し、通信の巨人NTTに立ち向かう孫は、そんなイメージを作り上げてきた。2015年3月期の営業利益は9,827億円と、雲の上の存在だったNTTドコモを2期連続で上回った。だが今、孫の経営が大きな課題にぶち当たっている。

 1つ目は、2013年に買収した米携帯電話3位のスプリントの低迷だ。2つ目は、ロボット事業にエネルギー事業、

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