『善と悪の経済学』
(トーマス・セドラチェク/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 高度に数学化され発展してきた現代経済学。しかし近年ではグローバル金融資本の利己的なふるまいや、金融危機などを経て、その限界や危険性が語られることが多い。一方で、コーポレートガバナンスやCSR、ブラック企業の問題など、経済活動における「倫理」的側面にいまほど注目が集まっている時代もないだろう。

 チェコで大統領の経済アドバイザーを務めた気鋭の経済学者である著者は、価値中立的に見える経済学は、実は「善」や「悪」といった倫理や価値基準を内包しており、今こそその起源に戻り、伝統的価値観にもっと耳を傾けるべきだと主張する。人間の経済活動については、哲学、宗教、神話、詩から多くのことを学ぶことができるのである。

 本書は著者の広汎な知識をもとに、ギルガメシュ叙事詩、聖書、ギリシャ哲学、神学、科学思想、近代経済学など、様々な学問分野を飛び越え、経済学とは何か?労働とは何か?経済成長とは何か?といった根本的な問いを読者に投げかける。それは単に知的好奇心を刺激されるだけでなく、現代と未来の世界を理解するためにも必須の探究といえる。

 本書はさまざまなバックグラウンドを持つ方の視野を広げ、ビジネスや人間に関して多くの示唆を与えてくれる稀有な一冊である。読み進めるうえで、学問的な意味での経済学の知識はほとんど必要ないため、ぜひ気軽にご一読頂きたい。なお本書はチェコでベストセラーとなり、15カ国語に翻訳、2012年にドイツのベスト経済書賞を受賞している。

著者:トーマス・セドラチェク(Tomas Sedlacek)
 1977年生まれ。チェコ共和国の経済学者。同国が運営する最大の商業銀行の一つであるCSOBで、マクロ経済担当のチーフストラテジストを務める。チェコ共和国国家経済会議の前メンバー。「ドイツ語圏最古の大学」と言われるプラハ・カレル大学在学中の24歳のときに、初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの経済アドバイザーとなる。
 2006年には、イェール大学の「イェール・エコノミック・レビュー」で注目株の経済学者5人に選ばれた。本書はチェコでベストセラーとなり、刊行後すぐに15の言語に翻訳された。2012年にはドイツのベスト経済書賞(フランクフルト・ブックフェア)受賞。

翻訳:村井 章子(ムライ アキコ)
 翻訳家。上智大学文学部卒業。翻訳書多数。最近の訳書に、『帳簿の世界史』『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(以上文藝春秋)、『トマ・ピケティの新・資本論』『幸福論』『道徳感情論』(共訳)(以上日経BP社)、『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』(筑摩書房)、『ファスト&スロー』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)など。

序章 経済学の物語─詩から学問へ
第1部 古代から近代へ

第1章 ギルガメシュ叙事詩
第2章 旧約聖書
第3章 古代ギリシャ
第4章 キリスト教
第5章 デカルトと機械論
第6章 バーナード・マンデヴィル─蜂の悪徳
第7章 アダム・スミス─経済学の父

第2部 無礼な思想

第8章 強欲の必要性─欲望の歴史
第9章 進歩、ニューアダム、安息日の経済学
第10章 善悪軸と経済学のバイブル
第11章 市場の見えざる手とホモ・エコノミクスの歴史
第12章 アニマルスピリットの歴史
第13章 メタ数学
第14章 真理の探究─科学、神話、信仰
終章 ここに龍あり

要約ダイジェスト

経済学の物語

 人間は、自分を取り巻く世界を何とか理解しようと絶えず試みてきた。そのときに役立つのは、物語である。経済学も今日にいたるまで基本的には「よい暮らし、よき人生」についての物語であり、それは古代ギリシャやヘブライの伝統から生まれた。

 どんな経済学も、結局のところは善悪を扱っている。どれほど高度な数学的モデルも、実際には物語であり、寓話であり、

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