- 本書の概要
- 著者プロフィール
例えば、経営者は社員の前で「情熱的」にビジョンを語り、経営会議では細かい「数字の鬼」と化し、若手社員には「包容力ある父親」のように接するとき、それらの人格を使い分けている。また、多くの読者も職場、家庭、旧知の友人との会合で、それぞれふさわしい人格を使い分けているはずだ。
そして本書では、複数の人格を育て、マネジメントすることで多様な「才能」が開花することが明らかにされている。なぜなら、人は「自分は技術屋だから…事務屋だから…」と自らを定義したとき、深層意識でそれ以外の人格に紐づく才能に蓋をしてしまっているからだ。レオナルド・ダヴィンチなど「万能の天才」とは、そのように自己を限定しなかった人間なのである。
本書では、ビジネス、思想、芸術など広汎な知の世界の旅をするように、対話形式で具体的に「多重人格をマネジメントする」技法と哲学が語られている。リーダーやマネジャーとして必要な人間力を身に付けたい方から、多重人格というテーマや人間心理、人間性に興味を持つ方まで、多くの人に示唆がある一冊である。
1951年生まれ。74年東京大学卒業。81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。87年米国シンクタンク・バテル記念研究所、客員研究員。90年日本総合研究所の設立に参画、取締役等を歴任。現在同研究所フェロー。00年多摩大学大学院の教授に就任。社会起業家論を開講。同年、21世紀の知のパラダイム転換をめざす、グローバル・ネットワーク・シンクタンク、ソフィアバンクを設立、代表就任。03年社会起業家の育成と支援を行う、社会起業家フォーラムを設立、代表就任。
08年ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのGlobal Agenda Councilメンバーに就任。10年4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議・ブダペスト・クラブ日本代表就任。11年東日本大震災と福島原発事故の発生に伴い内閣官房参与に就任。13年全国から1800名の経営者やリーダーが集まり、「スーパージェネラリストの7つの知性」を学び、「多重人格のマネジメントによる才能開花の技法」を修得する場「田坂塾」を開塾。14年『知性を磨く-「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書)を上梓。 著書は国内外で80冊余。
第二話 「表の人格」が妨げる才能の開花
第三話 「隠れた人格と才能」を開花させる技法
第四話 「豊かな人間像と人間性」を開花させる技法
要約ダイジェスト
人は、誰もが「多重人格」
「才能」の本質は「人格」にある
私は一人の話者として、色々な「人格」を切り替えながら、言葉を替えれば「多重人格のマネジメント」を行いながら講演を行っている。例えば、聴衆に深い共感を求めて語りかけるときの人格と笑いを誘うときの人格は、当然違ったものになる。
また、経営者は昔から「多重人格」でなければ務まらない。社員の前で会社のビジョンを語るとき、「ロマンと情熱」を持った人格が前に出なければ、社員の心に火をつけられない。一方、収益計画の話をするとき、「数字の鬼」のような厳しい人格が前に出てこなければ、企業の存続さえ危うい。
「器の大きな人物」という言葉は、「自分の中に幾つの人格を持つことができるか」という意味での「器」であり、