『人工知能は人間を超えるか
―ディープラーニングの先にあるもの』
(松尾 豊/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 現在、人工知能(Artificiall Intelligence=AI)に関して、不安と期待とが入り混じった報道を目にすることが多い。GoogleやFacebookなどが人工知能関連企業の巨額買収合戦を繰り広げる一方、スティーブン・ホーキング博士や、ビル・ゲイツ氏などは、人工知能が人類の将来を脅かす可能性を表明している。

 そこで本書では、国内人工知能研究のトップ研究者である松尾豊氏が、専門的になりすぎず、絶妙なレベルで人工知能技術の全体像、歴史的経緯と未来について解説していく。技術的な背景もわかりやすく説かれており、前提知識が全くなくても読み進められるはずだ。

 現在の人工知能をめぐるブーム的状況の口火を切ったのは、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる手法の発見にあった。これにより、データさえ与えれば、人の手を離れ機械が自動でどんどん学習していくことができる。しかし、この技術はまだ入口に立ったに過ぎないという。

 そのため、著者は人工知能に対し、「恐れるなかれ、侮るなかれ」とでも言うべき冷静なスタンスを取り、AIが人間を支配するといった未来(いわゆるシンギュラリティ論)は現実的ではないとする。またAIが産業構造に与える影響に関しても、長期的で俯瞰的な視野からその実像を解き明かしている。

 変化に対し、いかに正しい知識を得て、正しい打ち手を素早く打つかがビジネスの基本だとすれば、本書はまさに人工知能の現状と未来を正しく知るための基本書といえる一冊である。ビジネス観点や科学的好奇心から人工知能に関心を持たれている方は、ぜひご一読頂きたい。

著者:松尾 豊(まつお ゆたか)
 東京大学大学院工学系研究科 准教授。1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より産業技術総合研究所研究員。2005年よりスタンフォード大学客員研究員。2007年より現職。シンガポール国立大学客員准教授。専門は人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。
 人工知能学会からは論文賞(2002年)、創立20周年記念事業賞(2006年)、現場イノベーション賞(2011年)、功労賞(2013年)を受賞。人工知能学会 学生編集委員、編集委員を経て、2012年から編集委員長・理事。2014年より倫理委員長。日本トップクラスの人工知能研究者の一人。共著に『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』(KADOKAWA)がある。
序章 広がる人工知能――人工知能は人類を滅ぼすか
第1章 人工知能とは何か――専門家と世間の認識のズレ
第2章 「推論」と「探索」の時代――第1次AIブーム
第3章 「知識」を入れると賢くなる――第2次AIブーム
第4章 「機械学習」の静かな広がり――第3次AIブーム(1)
第5章 静寂を破る「ディープラーニング」――第3次AIブーム(2)
第6章 人工知能は人間を超えるか――ディープラーニングの先にあるもの
終 章 変わりゆく世界――産業・社会への影響と戦略

要約ダイジェスト

人間を超え始めた人工知能

 いま世の中は、人工知能ブームに差しかかり、新聞や雑誌、テレビにも、人工知能という言葉が踊っている。われわれ研究者にとってはうれしい春の到来だ。だが、それは暗くて長い冬の時代も思い起こさせる。

 実は、人工知能には、これまで2回のブームがあり、多くの企業が人工知能研究に殺到し、多額の国家予算が投下された。しかし、思ったほど技術は進展せず、人は去り、予算も削られ、長い冬がやってきた。三度目の春で、同じ過ちを繰り返してはいけない。

 ポイントは、50年ぶりに訪れたブレークスルーをもたらす新技術、「ディープラーニング」をどう捉えるかにかかっている。人工知能の現在の実力、

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