『いつも「時間がない」あなたに——欠乏の行動経済学』(S.ムッライナタン、E.シャフィール/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 いつも時間に追われている、月末になるとお金が足りず生活が苦しい、ダイエットがうまくいかない…実はこれらの問題にはすべて、共通の要因がある。それがサブタイトルにもある「欠乏(Scarcity)」である。

 「欠乏」は経済学では主に資源の希少性を指す客観的用語だが、本書では「時間がない」といった主観的感覚を含む概念となっている。「何かが足りない」という欠乏感は、無意識に人間の心を占領し、その心理が「トンネリング(視野狭窄状態)」や近視眼的行動として現れ、脳の処理能力をも減退させるという。

 そのため、バッファとなる「スラック(突発事態に対処するためのゆとり)」を持てず、いつまでもその境遇を抜け出すことができない。つまりは、欠乏が欠乏を生む構造となってしまっているのだ。

 本書では、様々な行動経済学的実証研究により、個人の時間管理から貧困問題、組織の衰退まで、その原因と対策を解き明かしている。世の中のほとんどの問題解決に応用できる視点といえ、まさに「いつも時間がない」方こそ必読の内容となっている。

 著者はそれぞれ、ハーバード大学経済学教授、プリンストン大学心理学教授を務める二人の研究者で、両者とも世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」や「世界の思想家トップ100」などに選出される気鋭の天才行動経済学者。

著者:センディル・ムッライナタン(Sendhil Mullainathan)
 ハーバード大学経済学教授。俗に「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞の受賞者で、専門は行動経済学・発達経済学。

著者:エルダー・シャフィール(Eldar Shafir)
 プリンストン大学ウィリアム・スチュワート・トッド心理学教授。専門は認知科学、行動経済学。※著者二人は行動経済学の成果の社会問題への応用をアドバイスする非営利組織〈アイデアズ42〉の共同創立者。

翻訳:大田直子
 翻訳家。東京大学文学部社会心理学科卒。訳書にイーグルマン『意識は傍観者である』、グリーン『隠れていた宇宙』、サックス『見てしまう人びと』『心の視力』『音楽嗜好症』、ドーキンス『ドーキンス博士が教える「世界の秘密」』ストーン&カズニック『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史1』、ブリファ『やせたければ脂肪をたくさんとりなさい』ほか多数。

序章
第1章 集中とトンネリング
第2章 処理能力への負荷
第3章 荷づくりとスラック
第4章 専門知識
第5章 借金と近視眼
第6章 欠乏の罠
第7章 貧困
第8章 貧困者の生活改善
第9章 組織における欠乏への対処
第10章 日常生活の欠乏
結論

要約ダイジェスト

欠乏のマインドセット

 締め切りに遅れるのは支払期限を過ぎた請求書によく似ている。打ち合わせのダブルブッキング(ない時間をあてること)は不渡り小切手(ないお金を使うこと)によく似ている。忙しければ忙しいほど仕事を断り、借金が多いほど買い物を控える。

 この深みから抜け出す算段を立てるべきだとわかっていても、実行するのは難しい。そして結局、借金で首が回らなくなったり、山のような約束に押しつぶされてしまったりする。状況が違うのにこれほど似ているのは驚きだ。

 時間の管理と金銭の管理には、ひとつ共通点がある。どちらも「欠乏」の影響を受けていることだ。ここでいう欠乏とは、

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