- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書はファーウェイ顧問などを務め、その内実をよく知る著者が、謎に包まれた創業者CEOの任正非氏や同社の経営戦略を明らかにした貴重な一冊であり、中国、台湾、米国で話題を呼んだ。そこで描かれているのは、顧客「至上」主義、「灰度」(グレーゾーン)を重視するマネジメントなど、欧米企業的、中国企業的な手法が高度に折衷された独特な経営哲学である。
また、同社株式の100%は従業員が保有しているため、上場している競合のように短期的業績ではなく長期戦略に基づき事業運営されている。なお、任氏の持ち株比率は1.4%に過ぎず、読書と思索以外の趣味はなく友人もほとんどいないという。さらに同氏は創業以来一度もメディアのインタビューに応じていない。
同社の特徴である常に危機(冬)に備える経営スタイルがどのように育まれたのか、任氏自らの手による数十ページに及ぶ「冬は必ずやってくる」という社内文章も掲載され、厳しい環境の中で経営に携わる方にとって、多くの示唆に富む一冊となっている。
華為集団顧問。1957年生まれ。82年漢中師範学院(現陝西理工学院)卒。陝西師範大学などで長年教鞭を執る。2009年シンガポール国立大学でMBA(経営管理修士)を取得。現在は北京無限詢奇信息技術および北京山石網科信息技術の取締役のほか、ファーウェイをはじめ多数の企業のアドバイザーを務める
著者:呉 春波(ウー・チュンポー)
中国人民大学公共管理学院教授。1962年生まれ。98年中国人民大学で経済学博士号を取得。95年からファーウェイのアドバイザーを務め、「ファーウェイ基本法」の起草や人材マネジメントシステムの設計などに携わった
翻訳:内村 和雄
1967年生まれ。出版社の駐在員として中国と香港で10年余りを過ごす。2010年に独立し、中国関連の書籍や記事の翻訳、企画などを手がけている
第1章 孤高の経営思想家
第2章 どこまでもオープンに
第3章 開放と閉鎖
第4章 妥協という名の芸術
第5章 顧客至上主義
第6章 奮闘者だけが生き残る
第7章 灰度哲学
第8章 保守的な「革新」
第9章 自己批判
第10章 7000人の集団辞職
第11章 均衡と不均衡の極意
ファーウェイの冬(任正非)
要約ダイジェスト
孤高の経営思想家
1987年、軍を退役して数年が過ぎ、何をやっても思うようにいかない日々を送っていた任正非は、一念発起してファーウェイ(華為技術)というちっぽけな企業を創業した。従業員は5~6人、起業資金はわずか2万元ほどだった。
任は通信機器の製造に関しては素人で、当初は既製品の代理販売を生業にした。にもかかわらず、任は最初から「20年後に世界レベルの通信機器メーカーになる」という壮大なビジョンを描いていた。
競争相手は市場開放が始まった中国に続々と進出した欧米や日本の通信機器メーカー、大手国有メーカーである。それから23年後の2010年、ファーウェイは売上高でエリクソンに次ぐ、世界第2位の通信機器メーカーに躍進した。
ファーウェイは、独自の企業文化に基づいた新たなマネジメントのスタイルを作り上げた。それは辛抱強さと謙虚さの文化であり、