- 本書の概要
- 著者プロフィール
読者も「自分が話し過ぎてしまった」「そういえば相手について全然聞いていなかった…」という経験は多いのではないだろうか。本書ではコミュニケーションにおいて「話す」「聞く」よりも、「謙虚に問いかける(Humble Inquiry)」ことが重要であると説き、その技術と心構えを解説する。
特に「謙虚に」という点が重要である。グローバル化が進み、国籍すら異なるビジネスパーソンが共に働く環境下で必要とされる「謙虚さ」は、地位や肩書、儒教的文化に伴うものではなく、共通の目標に向かって協力しあっている(相互依存している)という認識から生まれるものだという。そしてそれはリーダーにこそ求められるものだ。
一般向けに読みやすい内容ながら、上司、部下、同僚、顧客、家族とのあらゆる場面において、他者と良好な関係性を築き、いかに協力して目標を実現するか。学術的な説得力をもちながら、徒に専門的論点に陥ることなく描かれた一冊。
著者:エドガー・H・シャイン(Edgar H. Schein)
1928年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院名誉教授。シカゴ大学卒業後、スタンフォード大学心理学修士号、ハーバード大学社会心理学博士号取得。1956年よりMITスローン経営大学院で教鞭をとり1964年に組織心理学の教授に就任。2006年に退官し名誉教授。組織文化、組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミクスに関するコンサルティングを行い、アップル、P&G、ヒューレット・パッカード、シンガポール経済開発庁など多数をクライアントとしてきた。『キャリア・アンカー』(白桃書房、2003年)、『企業文化』(同、2004年)、『プロセス・コンサルテーション』(同、2012年)、『人を助けるとはどういうことか』(英治出版、2009年)など著書多数。
監訳:金井 壽宏(カナイ トシヒロ)
1954年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科教授。1978年京都大学教育学部卒業、1980年神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、1989年マサチューセッツ工科大学でPh.D.、1992年神戸大学で博士(経営学)取得。モティベーション、リーダーシップ、キャリアなど、働く人の生涯にわたる発達や、組織における人間行動の心理学的・社会学的側面を研究。近年はクリニカルアプローチによる組織開発の実践的研究も行う。『変革型ミドルの探求』(白桃書房、1991年)、『ニューウェーブ・マネジメント』(創元社、1993年)、『企業者ネットワーキングの世界』(白桃書房、1994年)、『働くひとのためのキャリア・デザイン』(PHP新書、2002年)、『働くみんなのモティベーション論』(NTT出版、2006年)、『明日を変える働き方』(日本実業出版社、2014年)など著書多数。
翻訳:原賀 真紀子(ハラガ マキコ)
ライター、翻訳者、東京工業大学非常勤講師。慶應義塾大学卒業、米ノースウェスタン大学ジャーナリズム大学院修了。著書に『「伝わる英語」習得術――理系の巨匠に学ぶ』(朝日新書、2009年)、訳書にトリシア・タンストール著『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』(東洋経済新報社、2013年)がある。
第1章 謙虚に問いかける
第2章 実例に学ぶ「謙虚に問いかける」の実践
第3章 ほかの問いかけと「謙虚に問いかける」はどう違うのか
第4章 自分が動き、自分が話す文化
第5章 地位、肩書、役割 人々に行動をためらわせる「境界」の存在
第6章 「謙虚に問いかける」を邪魔する力
第7章 謙虚に問いかける態度を育てる
要約ダイジェスト
良好な人間関係と強い組織を築くために
世界は今、目に見えて複雑になり、文化の多様性が増し、人々が互いに依存し合って成り立っている。だからこそ、良好な人間関係を育む適切な質問をすることはきわめて重要である。
相手の考えを聞き、相手は自分が必要とする知識を持っているであろうことに気づく―こうした心がけがなければ、国籍も職業も経歴も異なる相手を理解すること、ましてや一緒に仕事をしていくことなどできない。
組織の幹部はきまって私にこう言う。「自分たちは物事に対してオープンであり、部下の意見を聞きたいと思っている。それに、聞いたことはいつも真剣に受けとめている」。ところが部下たちから話を聞くと、